保育の現場で、乳幼児の心身の成長を間近で見て関わる仕事に、やりがいを感じられる保育士。
理想と現実は……。
保育士になろうと決めて資格取得した人の中には、様々な理由から「仕事がつらい」「異業種へ転職したい」と思っている人は少なくない現代。
しかし、本当に転職しても大丈夫?そもそも異業種で転職できるの?と不安に思われている人も、いるのではないでしょうか。
保育士から異業種転職の下準備はとても重要です。
異業種転職の下準備をおろそかにすると「心機一転がんばって働こうと思っていたのに、この職種は自分には合っていない」という状況に陥ってしまう可能性があります。
そこで、元保育士だった筆者が異業種へ転職した際に実際に考えたことや行動したことをお伝えします。
筆者が保育士から転職を成功した秘訣
- 保育士から異業種へ転職する場合、メリットデメリットを考える
- 保育士としての強みを洗い出す
いま保育士から異業種へ転職を考えている人や、保育士を活かせる別の職場を探している人は、ぜひ最後までお読みください。
保育士が転職したいと思うのはなぜ?
- 人間関係
- 低賃金
- 労働時間の長さ
- 仕事量の多さ
- 妊娠や出産
- 体力低下や健康上の理由
保育士資格を取得する理由はひとそれぞれです。
「保育士になるのが夢だった」
「子どもと関わる仕事をしたかった」
「保育士だった親の影響」
「何かしらの国家資格取得を目指していた」‥
学校または独学で、保育士資格を取得して晴れて保育職として働いている保育士が、転職したいと思うのはどんな理由からなのでしょうか?
人間関係
いまでこそ男性保育士が数名いる園も見かけるようになりましたが、まだまだ女性保育士が大半を占めている保育業界。
園によっては、先輩や同期と馬が合わない場合、キツク当たられチクチクと嫌味を言われたり、うわさ話・陰口を言われたりして心が疲弊してしまうことも……。
俗に言う女性社会のマイナス面ともいえるでしょう。
保育士は、複数担任で受け持つことが多く、例え1人担任だったとしても、休憩やその他フォローで誰かしらサポートします。
常に人と関わる職場でありチームで保育を作り上げていく仕事なため、ちょっとしたことで人間関係がギクシャクすると、日々の保育に大きく影響してしまうのです。
低賃金
保育士の賃金の低さは、メディアで取り上げられるようになり国も少しずつ改善の方向で動き始めていますが、まだまだ厳しい現状です。
小さな命を守り保育しながら、事務作業や保護者対応。
また、保育士不足からのサービス残業や、福利厚生が不安定な職場もゼロではありません。
労働に対する対価が伴っていないと感じている保育士もいるのではないでしょうか。
仕事量の多さ
一般的には、ただ子どもと遊んでいるだけ……と思われがちな保育士ですが、保育士業務は多岐にわたります。
園児の命を預かる立場の保育士は、アンテナを張り巡らせ人の動きを見つつ、時間単位で次の活動への導線やアプローチを考えながら保育をしています。
相手は生身の人間である子ども。
計画通りにはいかず瞬時に軌道修正を余儀なくされるため、対応力が求められる職種ともいえるでしょう。
日々の保育以外に、保育環境の整備・掃除・消毒その他の雑務があります。
事務作業としては、
などの書類作成があります。
さらに、季節ごとの園行事やイベントがあると、平常保育と並行して制作物などの準備に追われます。
リーダー職になれば、
上記の業務がプラスされます。
仕事量の多さに疲弊してしまい、退職や転職に気持ちが傾いてしまう保育士もいるのではないでしょうか。
労働時間の長さ
前述した仕事量の多さと保育士不足から、サービス残業が当たり前……という園も少なくありません。
早番でも、シフトの定時には上がることができず人手不足の穴埋めで保育に入ったり、事務仕事のためにサービス残業したり……。
数十年前に比べると、徐々に改善しつつあるようですが、園によってはブラックな職場は未だにあるのではないでしょうか。
妊娠や出産
女性の場合、ライフスタイルの変化から仕事の継続が難しくなることがあります。
受け持つクラスや子どもの年齢によって異なりますが、保育士は体力が基本になります。
幼少クラスでは、小さな子どもを抱っこやおんぶしたり、幼児クラスではダイナミックに身体を動かしたり……。
筆者は、妊娠中でも通常通り働き、妊娠トラブルで入院した経験があります。
妊娠や出産などを控えている状況では、上記のような仕事をこなしていくことは厳しくなるでしょう。
体力低下や健康上の理由
前述したとおり、保育職は体力も必要になります。
20代では簡単にできたことも、40代を過ぎると身体的負担になることも……。
おんぶや抱っこ・その他の影響から、首や肩、足腰に影響が出てしまい仕事の継続が困難になる場合もあるでしょう。
筆者はおんぶや抱っこに加え、ピアノ練習の影響から痛みや痺れの状態で働き続けました。
休日は、持ち帰りの仕事をするか通院しているか、寝ているか……という状況でした。
異業種を選択するメリット・デメリット|保育士からの転職
- 保育士からの異業種転職のメリット
- 保育士からの異業種転職のデメリット
保育士から異業種へ転職する際、気になるのがメリット・デメリットではないでしょうか。
そこで、筆者が考える異業種を選択するメリットとデメリットをお伝えします。
保育士からの異業種転職のメリット
上記は、異業種へ転職することで得られるメリットです。
独特な人間関係から解放されると心身の健康が保たれます。
肉体疲労も軽減され、心も軽くなると気持ちも安定しますね。
今までは、病欠時の振り替えとしてのみ使用できた有給休暇も、事前申請して適正な有給休暇の取得が可能に……。
残業しても終わらない場合、制作物を自宅に持ち帰ることも日常的でしたが、異業種へ転職後は、持ち帰り仕事はなくなりました。
また、制作物などの材料費を自身のポケットマネーで対応していましたが、転職後は必要なく費用面での負担がなくなりました。
収入面では、職種にもよりますが、転職前の低賃金から転職後に少しでもアップした場合、賃金アップはメリットといえるでしょう。
保育士からの異業種転職のデメリット
メリットばかりに目を向けて異業種へ転職して、あれ?こんなはずじゃなかった……とならないように、デメリットについてもお伝えします。
社会人経験が保育士職だけの場合、スキル不足の壁にぶつかる場合があります。
できること、できないことを正しく見極めて転職先を選び、必要であれば新しいスキルを身につけることも視野に入れておくといいでしょう。
保育現場と一般企業だと、社風や風土の違いを感じることもあるかもしれません。
新しい仕事や職場でのルールをゼロから学ぶことも必要になります。
転職する時期や年齢にもよりますが、未経験職種での転職となると正社員採用はハードルが高い場合も……。
以上のように、保育士が異業種へ転職する際、メリットと同じようにデメリットにも目を向けて、慎重に考えて行動することをおすすめします。
保育士の強みとは
- 自分の「棚卸し」に挑戦!
- 棚卸しの結果
保育士のみなさんは、自分の強みは何か考えたことはありますか?
筆者は、保育士から異業種へ転職したとき、たくさんの壁にぶつかったのです。
そこで、保育士である自分の強みとは何かをあらためて考えようと決めました。
自分の「棚卸し」に挑戦!
保育士としての自分の強みとは何か?を考えたとき、筆者は自分の「棚卸し」を実践してみました。
書籍やネット検索を読み漁り、自問自答を繰り返し……。
頭の中を整理し、考えたことを可視化するためノートに書き出しました。
そのとき使用したのは、A3サイズのノートと3B鉛筆です。
A3サイズを選んだ理由は、「ノートの大きさは思考の大きさに通じる」と耳にしたことがあったからです。
3Bの鉛筆は、芯が柔らかいので長時間筆記をしても手に負担がかかりにくいので選びました。
棚卸しの結果
自分の棚卸しをした結果、わたしが考えた保育士としての強みはこちらです。
保育士としての強み
- コミュニケーション能力
- 対応力
- 文章力
職場には先輩同僚をはじめ複数の保育士の他に、看護師や調理師などのスタッフと園児の保護者など人との関りは重要です。
コミュニケーションをとりながら、保育だけでなく事務・雑務に携わる対応力は保育士の強みといえるでしょう。
また、前述したとおり保育士業務の中には書き物が多く存在し、自然と文章力は磨かれていきました。
自分をふり返り客観視することで、冷静になれ頭を整理することができ、その後の転職活動がスムーズに……。
いま、保育士としてとどまろうか、異業種へ転職しようかと迷われている人は、ぜひご自身を見つめなおして、保育士としての強みを洗い出してみてはいかがでしょうか。
実際に保育士から異業種転職した職種や可能性のある職種とは
- 事務
- 接客業
- webライター
- ICT企業
- カスタマーサポート
- 介護職
ここでは元保育士の筆者が実際に転職した職種や可能性のある転職先についてお伝えします。
事務
前述したとおり、保育士業務には、子どもの記録や書類作成、保護者や電話対応などの事務作業や雑務などがあります。
ひと昔前は手書きの書類が主流でしたが、いまでは園だよりや記録などはPCを使って作成する園も増えてきているようです。
事務や雑務などの作業に携わった経験は、事務系の転職にプラスになりました。
接客業
子どもや保護者、職員スタッフなど人との関わりが多い保育士は、接客業にも向いているのではないでしょうか。
接客業は、全体を把握しながらその日の目標(売上)に対して、いま何をするか?お客様にどうアプローチをするか?を考えて業務にあたります。
保育士は立案した指導計画のもと保育にあたり、様々な人と接するので接客業と共通していますね。
また、子ども服やファミリー向け写真館など、子どもと関わる職場であれば保育士の知識を活かすこともできるでしょう。
webライター
筆者は現在、執筆業として開業し複数の企業様と業務委託契約を結び、在宅で仕事をしています。
保育士時代も文章を書く機会は多く、現在に生かされています。
ICT企業
PCやその他のスキルは必要不可欠ですが、過去にICT企業へ転職した経験があります。
筆者の場合は、職業訓練校でwebデザインのスキルを学びました。
webデザイナー兼事務作業や雑務などを臨機応変に対応できる人材を求めていた企業と、筆者の保育士経験がマッチしたようです。
カスタマーサポート
保育士として、保護者対応の経験が企業のカスタマーサポートに生かされました。
電話対応では傾聴の姿勢で、メール対応では保育士時代の連絡帳や書類作成などで培われたスキルが役に立ちました。
介護職
筆者は介護職としての転職経験はありませんが、保育士から介護職へ転職される方もいるようです。
同じ福祉の分野である介護職も、保育士の経験は役に立つと考えられます。
しかし、保育士からの転職理由が低賃金や健康上の理由であれば、同様な介護職の継続は厳しいかもしれません。
保育士の資格を活かせる職場とは?
- 院内保育
- 事業所内保育
- 小規模保育事業
- 学童保育・クラブ
- 放課後等デイサービス
保育士から異業種への転職についてお伝えしましたが、ここでは保育士の資格を活かせる職場は?の視点から、認可保育園以外で保育士資格を活かせる職場についてお伝えします。
筆者が経験した職場も含めピックアップしました。
1.院内保育
病院内に併設されており、院内で働く職員スタッフのお子さんを預かる保育施設になります。
小規模な園が多く、大きな行事はない印象です。
当時勤務していた職場は、0歳~2歳時までを2グループにわけ保育していました。
比較的大きな病院だったため、敷地内に小さな園庭も設置されており静と動の活動が取り入れられメリハリのある保育ができました。
2.事業所内保育
事業所内に、保育施設を設け従業員の子どもを預かります。
施設によっては、地域の子どもを預かる場合もあるようです。
対象年齢は、原則0歳~2歳児です。
クラス制ではなく少人数を全体で保育するケースが多く、園内行事も多くはないので、行事準備などの仕事量は軽減されるでしょう。
3.小規模保育事業
原則として、0歳〜2歳児までを対象にしています。
小規模なので大きな行事やイベントは少ないですが、少人数のきめ細かい保育を希望されている人には合っているかもしれません。
ただし、職員スタッフも少人数のため、事務や雑務なども持ち回りで担当し、急なシフト変更や欠勤対応は難しいでしょう。
4.学童保育・クラブ
小学生以上の子どもが対象になりますが、保育士でも働くことは可能です。
勤務時間は、小学生が下校する時間帯から夜にかけてが多いです。
学童では、放課後児童支援員の配置が義務付けられています。
保育士資格があると、この放課後児童支援員取得のための受講が可能になります。
スキルアップを目指して新しい資格にチャレンジすることもできますね。
乳児だけでなく、幅広い年齢層の子ども達と関わる仕事に興味があれば、検討してみてはいかがでしょうか。
5.放課後等デイサービス
障がいや何らかの特性をもつ小学生から高校生までを支援する施設です。
集団生活や自立した生活を過ごせるような訓練やサービスを提供しています。
各施設によって様々ですが、例えば、学習症の子どもの勉強(宿題)のフォローなども行っている場合もあります。
保育士の異業種転職や保育士を活かした転職は可能!準備を大切に
現在、日々の保育に携わっている保育士さんへ……本当にお疲れ様です。
過去、保育士として働いてきた筆者が保育士資格を活かしての転職や、異業種への転職経験を踏まえて、記事をまとめました。
つらいときや苦しいときに、感情に任せて行動を起こすと冷静な判断ができず思いもよらない結果になることもあるでしょう。
自分が望む転職をつかみたいのであれば、準備は大切です。
傷ついた感情は脇に置いて、過去の自分、現在の自分、これからの自分について考えてみることをおすすめします。
筆者が保育士時代転職したときに考えたことや行動
- 保育士としての強みを洗い出す
- 保育士から異業種へ転職する場合、メリットデメリットを考え慎重に行動する